出会いは電車の中
物語の始まりは、新垣結衣さん演じる黛真知子新米弁護士が、始めて担当した裁判に敗訴したことから始まりました。彼女は正義感にあふれ、警察の取り調べで自白を強要されたと主張する被疑者を救いたいと、控訴時にも担当することを希望するのです。

しかし、上司である三木法律事務所の三木所長からは、控訴断念を言い渡されます。それに不服を持っていた黛に、三木所長の女性秘書の沢地君江から、今まで裁判に負けたことない’無敗’の古美門弁護士の存在を聞き、裁判へのサポートを求めることにしたのです。
それと時を同じくして、黛は電車の中で老人に席を譲らない人にクレームをつけます。しかし、その相手は言葉巧みに理由を付け、席を譲る必要がないことを説き、次の駅でその老人は電車を降りていきました。
沢地から紹介された古美門弁護士事務所を訪れた黛の前に現れた古美門弁護士こそ、電車の中で彼女を言いくるめた’あの男’だったのです。しかも、弁護を引き受けるのに、法外な弁護費用を要求するのです。
でも、その甲斐あって弁護にも勝利しますが、古美門を異常に敵視する上司、三木法律事務所の職を失ってしまうのです。それ以上に、黛は古美門の証拠集めや無罪を証明するための手法に驚き、心動かされ、古美門の元で働くことになったのです。
二人は’馬が合う’のか、口論や対立をしながらも、次々と被疑者の弁護を成功させ、古美門の’無敗記録’を更新していくのです。この二人の掛け合いと、喜怒哀楽に富んだ古美門弁護士の個性に、ぐいぐいとドラマに引き込まれた方たちも多かったことでしょう。
上手に世情に風刺している
二人のコミカルな掛け合いもドラマを楽しませる大きな要因ですが、それと同時に二人が扱う事件は、私たちが日々目の当たりにしている事件や出来事などがドラマに組み込まれ、面白さと同時に、シリアスな問題提起も私たちにしているのです。
当時、話題になっていた奈良騒音傷害事件を覚えていますか?ベランダで布団を叩く姿が印象的だった’騒音おばさん’で有名だったあの事件です。アレを彷彿させる’近隣トラブル’も、取り扱われました。
ちょうど富士山が世界遺産に認定されるころに、すでに世界遺産登録されている屋久島のような自然溢れる島の世界財産である「おざおざの森」を巡り、住民の自然保存派と近代化派との対立を描いた回もありました。

また、アニメや漫画に人気に伴って、アニメーターの過酷な労働条件がネットなどで話題になっていたころには、夢と、過酷な仕事と低賃金などの実際とのはざまに苦しむアニメーターと、監督との対立も裁判として扱われました。
元ライブドア社長、堀江氏を彷彿させるストーリーも印象的でした。インサイダー取引と所得隠しで逮捕された青年実業家が刑期を終えて復帰後に、自分を侮辱した記事を書いたメディアやブロガーらを名誉棄損で訴えた裁判です。弁護士を雇わずに、自ら法廷に立ち、メディアを上手に利用し裁判を行いました。しかも、本来の彼の目的は、自らの名誉を回復するためではなく、裁判が彼の’ブーム’だったのです。

これら以外にも、毎日無理してブログ更新を続けるブロガー、曲の盗作、ストーカー、都市部の大型建築による日照問題と住民訴訟、公害訴訟、美容整形、遺産を巡る親族の争い、ペットをまるで我が子のようにかわいがり過ぎる人々も、揶揄されていました。
さらにもう一つの魅力が
基本的には一話完結で、事件が巻き起こり、二人が弁護士として裁判を争う形でドラマが進んでいます。もちろん毎回観たほうがトータルの流れがわかって面白いですが、それでも一話を逃しても、翌週から戻っても全体のストーリーから越脱することはなかったのです。
しかし、それと同時に、シリーズを通してのストーリーも流れていきました。
第一シリーズでは、黛弁護士が勤めていた三木法律事務所の三木所長と古美門弁護士との確執です。古美門弁護士の父親である古美門検事を尊敬し、その縁で古美門弁護士を自分の法律事務所に迎え入れたのです。

しかし、古美門弁護士のその手法と、ある事件に際し自らの子どものように思っていた’沙織’を亡くしてしまったことから、古美門を解雇し、対立し、彼に敵対するのです。シリーズを通し、裁判では、古美門弁護士を倒すべく、刺客として敏腕検事を法廷に送り込みます。
法律事務所所長と裁判で古美門弁護士のわだかまりの原因である’沙織’が、’ハムスター’だったとは、驚きを隠せません。

第二シリーズでは、いくつかのストーリーが各話の裁判と共に進行していきます。メインは、「保険金殺人事件」の被告、’安藤貴和’の裁判を巡る展開です。彼女は、保険金目当てに愛人である徳永を毒殺、徳永の娘さつきを毒殺未遂したとして死刑判決を受けていたのです。
元々三木法律事務所の磯貝弁護士が、担当していましたが手に負えなくなり、安堂貴和に古美門弁護士を紹介し、一億円の報奨金で古美門が弁護を引き継ぐことになりました。
第一話で、古美門弁護士と黛弁護士は、この裁判に負けてしまうのです。なぜなら、無罪を目指していたハズの安藤被告は、裁判の最終尋問で、自分の犯罪を認めてしまったからです。これで、古美門弁護士の不敗記録が途絶えてしまったのです。
その時の検事には、ベテラン検事である醍醐と、古美門法律事務所で弁護士実習を経験した羽生が当たっていたのです。その羽生と醍醐の元で働いていた本田ジェーン、安藤と古美門を結び付けた磯貝弁護士は、「勝ち負けではなく、双方が幸せになること。’Win-Win’を目指す」をモットーにNEXUS法律事務所を設立します。黛弁護士は、その事務所に移籍したのです。
さらに、第一シリーズと第二シリーズの間に放送されたスペシャルから登場した別府裁判官も、要所要所で登場し、あの古美門弁護士を手のひらで転がすように、軽くあしらう姿も爽快でした。

羽生と本田ジェーンは、自ら開いた法律事務所を離れ、検事として、安藤貴和の事件を担当し、古美門弁護士と黛弁護士と法廷で闘うこととなったのです。結果、古美門弁護士が勝利し、安藤貴和は殺人罪を免れ死刑判決は覆されたのです。
また、全編を通して、古美門弁護士の身の回りの世話をする謎の事務員、服部さんの存在も忘れることはできません。毎回のように多彩な特技を披露し、黛弁護士を始め周囲の人間を驚かせます。「昔、〇〇をしておりました」と、世界各国で様々な経験を積んでいるにもかかわらず、「たわいもない特技でございます」と謙遜します。プロ並みの料理の腕で、古美門法律事務所に関わる人達の胃袋をガッツリつかんでいます。
